『散る桜、残る桜も散る桜』 父祖の思いを受け継ぎ、次の世代へと伝えたい
今回は、『倫風』10月号(社団法人実践倫理宏正会発行)より、三浦朱門氏の論文を引用します。

※三浦朱門(みうらしゅもん)
三浦朱門氏
●大正十五年東京都生まれ。作家。東京大学文学部を卒業後、日本大学芸術学部の教職に就くとともに、第15次「新思潮」に加わり作家活動に入る。昭和42年『箱庭』で新潮文学賞受賞。以後、『犠牲』『楕円』『正四面体』など次々と話題作を発表。独特のユーモアとエスプリの効いたエッセイも多い。文化庁長官、教育課程審議会会長などを歴任。平成11年産経正論大賞を受賞、文化功労者。同12年より日本芸術院院長。



■家庭教育を復活させ、健全な社会を
最近、若者による通り魔事件が相次ぎ、道徳の荒廃が大きな社会問題となっています。日本人の倫理観はなぜ、こうも希薄化したのでしょうか。作家で日本芸術院院長の三浦主門さんは、個人主義重視の戦後教育が元凶として、愛国心教育の大切さを説きます。

若者の心を歪めた戦後教育

今年六月、東京・秋葉原で十七人を殺傷した通り魔事件があった。ネット上で犯行を予告、トラックで歩行者天国に突っ込み、戦闘用ナイフで次々に人を刺すという衝撃的な事件であった。こうした若者による無差別殺人事件が、ここにきて頻発している。一月にも、東京・品川の商店街で十六歳の高校生が五人に切りつける通り魔事件を起している。三月には茨城県土浦市で二十四歳の若者が八人もの人を殺傷する事件があり、そのすぐあとに岡山県で、高校を卒業したばかりの少年が駅のホームから人を突き落とし、死亡させている。秋葉原の事件のあとには、八王子で女性二人が包丁で殺傷される事件があった。

このような無差別殺人は特異な若者が起した特殊な事件だといわれているが、果たして特殊な事件として片付けていいのだろうか。こうした事件が立て続けに起こるのは、人の命の尊厳を思う心や社会性が欠如し、自暴自棄になっている若者が増えている証左ではないのか。

私が若者であった戦前、こうした事件はなかった。現代の若者も私たちの世代と同じ日本人の遺伝子を受け継いでいるから、DNAレベル、つまり本質的に違っているわけがない。だとすると、過去には考えられなかった事件が頻発しているのは、生育環境の違いによるとしか考えられない。その元凶を探っていくと、道徳心や愛国心を否定した戦後教育に行き着く。
教育勅語とは何か

戦前までのわが国の教育は、一八九〇(明治二十三)年に発布された「教育勅語」に則って行われてきた。これは日本の伝統的な道徳観や倫理観、人としての正しい生き方を、明治天皇が国民に語りかけるという形で明文化されたもので、わが国の教育理念とでもいうべきものである。その中心部分を今時の文章に書き改めてみる。

「親に孝養をつくし、兄弟、姉妹はたがいに力を合わせて助け合い、夫婦は仲むつまじく解け合い、友人は胸襟(きょうきん)を開いて信じ合い、そして自分の言動をつつしみ、すべての人々に愛の手をさしのべ、学問を怠らず、職業に専念し、知識を養い、人格をみがき、さらに進んで、社会公共のために貢献し、また法律や、秩序を守ることは勿論のこと、有事の場合は、一身をささげて公のためにつくし、国の永遠の発展の礎となれ」

道徳とはどういうものかを家族関係、友人関係から順を追って説明し、勤勉と謙虚さを説き、いざという時は国家、社会のためにつくすべきだと訴える。当時の日本人にとっては至極当然の内容である。

ところが日本が国民教育の基本としてきたこの「教育勅語」は、終戦直後の一九四八(昭和二十三)年に占領軍の指示により、国会で排除が決議された。

戦前、「教育勅語」は、ほとんどの学校で天皇の「御真影(ごしんえい)」(写真)とともに大切に保管され、式典などでは必ず奉読されていた。そうした「教育勅語の神聖化」が皇国史観さらに軍国主義復活につながる恐れがあるとして、GHQ(連合国軍総司令部)は排除を求めたのである。

連合国の対日占領政策は、基本的には日本の武装解除ならびに非軍国主義化であった。そのためにGHQは、「武力による威嚇と武力の行使」を否定・放棄する内容の憲法の制定を指示した。こうして生まれた新しい「日本国憲法」は一九四六(昭和二十一)年に公布された。しかしGHQは、憲法改正だけでは日本人の価値観、倫理観は変えられないと考え、日本の伝統的な教育理念をも解体しようとしたのである。

「教育勅語」の排除は、いわば日本への「精神面の武装解除戦略」だった。占領下にあった日本はその策略に見事にはまり、教育現場では、折りしも台頭してきた平和思想、反戦思想と結びついて、戦前のわが国のあり方を何もかも悪いものとみなす国家軽視教育が、一気に広がっていった。

衰退した家庭教育

「教育勅語」の代替として一九四七年に制定されたのが「教育基本法」だ。アメリカが新憲法を補完する意図でつくった「教育基本法」は、「教育勅語」を真っ向から否定するものであり、家族関係や友人という人間関係の基本や、自己修養の大切さ、公徳心が全否定された。

それに代わって示されたのが、「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期す・・・」とする、個人主義と平和の理念である。

日本人が古くから守ってきた価値観、倫理観を織り込んだ「教育勅語」が否定された中で、子供も、教師も、そして親も戸惑い、盲目的に「教育基本法」が謳(うた)う「個人の尊厳」「個性尊重」へと傾斜していった。以後、六十年間にわたって道徳なき教育が日本の子供たちに施されてきた。それが今日の嘆かわしい状況を生んだといってもあながち見当違いではないだろう。

道徳の否定とともに、家族や家庭の存在を無視したことも「教育基本法」の大きな罪であったと思う。社会、国家の最小単位とされる家庭は、教育の重要な場である。

敗戦直後の日本は物質的には貧しかった。家族は一室に集まって、ちゃぶ台やこたつの上に板を乗せてそろって食事をした。食事が済めば、そこが家族の団らんや勉強と仕事の場になった。食料も乏しかったから、限られた食物を家族で分け合って食べた。そのような中で、家族の絆が強まり、親への感謝、きょうだいへのいたわりの心などが育ったのである。

私自身、家族からさまざまな影響や教えを受けて、価値観や倫理観を培ってきたと実感する。私の母は新潟の潰れた農家の出で、上京して東京府立第一高女に入ったものの、学資が続かずに退学して、できたばかりの新劇の下っ端女優になった。当時、女優になるなどと言おうものなら、それこそ勘当ものだった。母もそうした扱いを受けたようだが、自分の意思を貫いた。

一方、父はイタリア文学の翻訳家であり、編集者、大学教員でもあった。父は、妙な男で、受験勉強のようなこせこせした勉強はするな。好きなことに熱中しろ、東大などに行くと人間が下等になる、と言っていた。恐らく父は、幸せは学歴でなく自分自身でつくるもので、人間には身の丈に合った幸せがある。どんなに高級な服でも、体に合わなければ、窮屈だし道化者だということを伝えたかったのだと思う。

私はこの風変わりな両親から、世間の常識にとらわれず、自分を信じ、自分を見失わずに生きることの大切さを学んだことを今も感謝している。

親から学ぶ内容は人によって異なるだろうが、戦前から戦後しばらくの間、多くの人々が両親や家族から、生活の指針となる価値観、倫理観を教えられたのである。

ところが、そうした日本の家族は、GHQが望んだ個人主義の広がりとともに崩壊していった。食事ひとつとっても、かつては家族で食卓を囲んだものが、いつの間にか、それぞれが勝手に食物を冷蔵庫から出して、好きな時間に食べるようになってしまった。また情報化社会になると、世の中のことはテレビをはじめとするマスメディアが教えてくれるので、父親や母親に聞く必要はないということになった。

教育環境が整備されるとともに、本来家庭で教えるべき、しつけや社会規範さえも学校が教えてくれることになった。しかし、当の学校では道徳教育が禁じられていたのである。

愛国心復活の兆し

国家を軽視する教育を多分に受けてきた戦後生まれの団塊世代はすでに六十歳を迎え、団塊ジュニア世代も成人になっている。彼らは、程度の差こそあれ個人主義的で、公を尊重するよりもまず個人が幸せになること、徳育よりも知育を優先させた教育を受けてきた。学歴偏重主義が社会に浸透し、幸せな人生を送るには受験勉強をして一流大学に入り、大企業に就職することが一番だという価値観が広がり、やがて、それがエスカレートし、競争原理主義、拝金主義へと姿を変えていった。金儲けのためなら手段は選ばない、という生き方である。

一九九〇年代からの金融不祥事、官僚不祥事、企業不祥事、そして昨今の偽装事件頻発にはそういう背景がある。こういう大人ばかりになれば、子供や若者の道徳心が低下するのは、むしろ当然といえる。

「このままでは国家が衰亡する」。そんな危機感が社会に広まり、それにつれて戦後失われた道徳教育や愛国心を復活させようという動きが出始めたのは当然の成り行きだ。一昨年の暮れに「教育基本法」が六十年ぶりに改正されたが、それも戦後長く否定され続けてきた愛国心を蘇生させる動きの一つだ。改正法には「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできたわが国と郷土を愛するとともに・・・・・」という表現で愛国心が謳われている。

個人という分子には、国家という分母があることは常識になりつつある。行き過ぎた個人主義で荒廃した日本を健全な国家として再生するには、公を尊ぶ心、つまり愛国心教育をおいてほかにない。多くの日本人が、ようやくこのことに気付いたことを思う時、私は、日本の未来に明るい陽がさしてきたように感じるのである。(終)

教育勅語については、以前拙ブログの記事でも紹介したのでご覧下さい。
★今こそ教育勅語に学ぶとき



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コメント
この記事へのコメント
ちょくちょく拝見させていただいてます。
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2008/09/15(月) 23:52 | URL | サトシ #-[ 編集]
>milestaさん
仰るとおりですね。知育も大事ですが、徳育はそれ以上に大事ですものね。

>あっちゃん
確かに親の世代から教育し直さないといけないのかとも思いますが、それは無理なので、せめても子供たちには真っ当な徳育教育をしてもらいたいですね。
2008/09/14(日) 20:22 | URL | spiral(管理人) #l7AT0Hcg[ 編集]
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2008/09/12(金) 20:06 | | #[ 編集]
戦後教育の結果
団塊の世代と呼ばれている私たちの父母世代の人たちが育てた子供が『モンスターペアレント(ツ)』と呼ばれている怪物親ですね。

手遅れかも知れませんが団塊の世代から教育し直さないといけないのかも・・・。

子供たちの本来もっている素晴らしい資質は昔も今も変わらないと思います。

受けるべき正しい教育をされないと、人の痛みも苦しみも解らなくなってしまうんだと思います。

本来の道徳観を教える正しい教育の機会を与えられると日本は素晴らしい国になりますね。
2008/09/12(金) 08:35 | URL | あっちゃん #TT0fzUCU[ 編集]
>徳育よりも知育を優先させた教育

そして結果的に拝金主義へ・・・という部分、その通りだと思います。勉強をしなくて良いというわけではありません。だけどあまりに知育偏重で、徳育を疎かにした結果、頭はいいのに品格がない、人を思いやれない、という人が増えているように感じます。

本来の個人主義というのは自律した人間を指し、悪いものとは言い切れないと思うのですが、戦後日本は個人主義と利己主義をはき違えてしまったのではないでしょうか。
2008/09/11(木) 22:47 | URL | milesta #S4B2tY/g[ 編集]
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